『EV.Cafe 村上龍+坂本龍一』

EV.Caf´e(イーヴィー・カフェ)―超進化論 (講談社文庫) EV.Caf´e(イーヴィー・カフェ)―超進化論 (講談社文庫)
村上 龍, 坂本 龍一
講談社 1989-01
内容(「BOOK」データベースより)
今、ひとつの時代が終わろうとしていることを実感する2人の”龍”。が、その実像が不鮮明なのはなぜか。そこで、この疑問を気になる6人の論客(吉本隆明、河合雅雄、浅田彰、柄谷行人、蓮実重彦、山口昌男)にぶつけてみた。現代思想の核心に迫る磁場・サロン「進化のカフェ」で白熱鼎談の幕がおとされた。
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80年代の本ですが、ひとつの時代があったって感じだなあ。先日教授コンサートで会ったHajime氏から紹介されました。

ロッキンオン形式とでもいいましょうか、読者無視で話されてる専門用語が巻末に注釈としてずらーっと並んでいます。これを読むだけでも圧巻。

しかし感想はそんなところにあるのではない。私はなんといっても村上龍に耐えられなかった。「いいから黙ってろ!」と心で叫んでいた。坂本龍一と論客の話はかみ合ってると思うんだけど、村上龍の言ってることがどうもずれている。それは本人も自覚してたらしく、巻末で「自分のことしか話していないのである」とあったので良しとするけど。そして何で私が村上龍を嫌いになったか理解した。彼は米軍基地近くの出身ということが原体験として強く、「コーラ飲んでサーフィンやって女の子と遊んでるほうが快楽じゃないか」ということが根本にあるんだ。最近話題の草食男子の反対をいく肉食男子なんだ。そういうのがどうも私の好みとずれてきたんだろう。

一方、坂本龍一は論理的で冷静だと感じた。こういう知的なバックボーンを読んじゃうと、純粋に音楽を判断するんじゃなくて、「教授だから」的な権威を自分のなかで与えそうで怖い(笑) しかし、これはあくまで20年前の教授であって、今なら絶対違うことを言うと思うな。

また論客との話は、私がそれぞれの著作や出てきた作品をわかってないので何も考えずに読んでた。内容が彼らの「感想・分析」といったものになってるので、知らない作品の感想を言われても「あ、そうなの?」と流すしかない。すみません、若気の至りで格好つけて読んだ作品もありますが、まったく自分のなかに残っていません。ニューアカ……。

面白かったのは、河合雅雄さんがおっしゃってた狩猟民族と農耕民族だったら農耕民族のほうが(時間的に)忙しいということ。人は忙しい方向に進んでいったというのが興味深い。その流れからおしゃべりをなくしていくということが文明のひとつの特徴だという話になってたけど、喫茶店のBGMやウォークマンなどが他の人間とのコミュニケーションを遮断するために流しているということを教授が指摘してて、「コミュニケーションを遮断する音楽」とは新鮮な言葉だった。なるほどなあ。ドトールの狭い机で無音だったら怖いもんなあ。

と、いろいろ面白い視点があるんだろうと思われる本なんだけど、いかんせん私の知識不足で読みこなせませんでした。リベンジは……あるのかわからん。

『スピリチュアルにハマる人、ハマらない人 / 香山リカ』

スピリチュアルにハマる人、ハマらない人 (幻冬舎新書) スピリチュアルにハマる人、ハマらない人 (幻冬舎新書)
香山 リカ
幻冬舎 2006-11
内容(「BOOK」データベースより)
いまスピリチュアルが大ブーム。かつてはアヤシイと思われていた「守護霊」「前世」「魂」の話題が、軽く明るく普通に語られるようになったのはどうしてなのか?そこには「人は死んでも生き返る」と信じる子どもの増加、「科学のお墨付き」を売りにした「脳トレ」「健康食品」ブーム、「自分の幸せ」だけが大事な内向き志向との隠れた共通点があった―。時代の空気を読むスペシャリストが、ブームの深層にひそむ、日本人のメンタリティの変化を解き明かす。
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タイトルが面白そうだったので。

江原某を私はよく知らずテレビも観たことないんだけど、流行ってるなあとは思う。そしてみんな(若い女性ね)はどこまで信じてるのかなあとも思う。

私個人は、霊も前世も神様も信じていない。ただ神様に関しては「いてもいいし、いてほしいと思う」と思う。ただしこの神様は宗教の神様ではなく、哲学や数学に出てくるような概念上の神様だけど。じゃあスピリチュアルを否定するのかというとそういうわけでもなく、ユングによって提唱されたシンクロニシティは結構信じてたりもする。オーラの色はわからないけど、出来る人の雰囲気は違うと思ったりもする。パウロ・コエーリョも読む。そんな風にスピリチュアルには少しあやふやな立ち位置である(2009年春現在)。

彼女の分析で面白かったのは、現代のスピリチュアルが「現世利益」「個人の幸福」に費やされてるという指摘。なるほど、これが「世界平和」「他者の幸福」に行ったら宗教だけど、個人利益に向かっている場合、その世界への敷居は低い。「ちょいスピ──”幸運癖”をつけるちょっとスピリチュアルな方法」と書かれたら、おまじないみたいなものだしな。「恋愛とお金を手にいれてミラクル☆ハッピー」という軽さが現代のスピリチュアルなのだろうか。

あとよしもとばなな氏や林真理子までもが江原さん信者だとは知らなかった。こういう有名人がハマってるのもブームの一因だったのかしら(いまはブーム、尻つぼみだよね?)。

特に結論はなく分析だけなんだけど、なかなか面白い視点の本だった。話題だったことだし江原氏の本でも読んでみようかしら。しかし、私はころっと精神世界にハマってしまいそうな素地があるので、気をつけて踏み入れていかねばいけないな。

『40歳からの肉体改造 / 有吉 与志恵』

40歳からの肉体改造―頑張らないトレーニング (ちくま新書) 40歳からの肉体改造―頑張らないトレーニング (ちくま新書)
有吉 与志恵
筑摩書房 2008-06
内容(「BOOK」データベースより)
肥満、腰痛、肩こり、関節痛。ストレスで胃が痛む。生活習慣病も心配。でも、忙しくて運動なんてする暇はない…と、身体の不調から目をそらしていませんか?ハードな運動は必要ありません。頑張りすぎは、むしろ身体を壊してしまいます。では、どうするか。骨格・筋肉・リンパを正しく働かせること。身体の軸(コア)を安定させることです。「コンディショニング(改善系トレーニング)」なら、無理なく短時間で効果テキメン。日常生活や仕事のパフォーマンスがグングンとアップするのを実感してください。
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腰がね、痛いんですよ。

腰痛というほどひどくはないんですが、同じ姿勢でいられないのです。これは背筋を鍛えてないせいなのかしら? 背筋も悪いしなあ(姿勢正しくすると腰が痛いってどういうこと?!)と、タイトルにひかれて読んだのでした。

結果、想像していたのとは違った本でした。筋トレの本かと思ったんだけど、そうではなく「リセット・コンディショニング」という名前で、筋肉をほぐしてリンパなどの血流をよくするという考え方でした。こわばっている筋肉をニュートラルに戻すことによって、本来の筋肉のありようにするというとこなのかしら。全然負荷などはなく、細かくゆすったりさすったりするので、一人マッサージのような感じ。まったく運動をしていない人には入門として良いかも。私にはヨガの導入部とかぶるとこもあったので、ちょっと物足りなかったかな(なんて言うと運動してる人みたいだが!)。

『イチローの流儀 / 小西 慶三』

イチローの流儀 イチローの流儀
小西 慶三
新潮社 2006-03-29
内容(「BOOK」データベースより)
他人と同じ方向は見ない。「一生懸命」と自分で言わない。常に同じリズムで行動する…最も多くの試合を観てきた記者が綴る天才打者の流儀。大記録達成前の苦悩、スランプ脱出法、試合前の徹底した準備、未公開のオフの過ごし方、ドラマ出演の背景などあらゆる局面に密着。限りない進化の秘訣を解明する。
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WBC効果(笑)。

あまりにイチローが格好良すぎたので、ちょっと読んでみようという流れ。彼のビッグマウスというかナルシストな発言にひくときもあるんですが、なんにしても結果を出してるんだからすごい。そして本を読んだらもっとすごい人だった。

彼は打てていたときでも、自分の身体に違和感(上体の固さ)を感じたら、それを治すように調整した。その微細な感覚がわかる彼は、自分の身体と対話ができる人なんだろう。有名な話だけど、彼は自分のバット以外を持つことはしない。人のバットの重さによって自分の感覚が狂わされるのが嫌だからだ。そして自分のコンディションを整えるための同じリズムでの生活。地元なら7年間奥さんのカレーを食べ、遠征先では某チェーン店のチーズピザを食べ(具がないので味にばらつきがないからだそうだ)、マイ枕を持って移動し、同じ手続きを踏んでバッターボックスに入る。その同じ作業のなかで、彼は自分の身体と対話して差異を調整し、プロとして走っているんだなあ。

120%の準備という点で驚いたのは、彼が眠らずに試合に出たという経験があること。これは日本時代、ペナントレースに関係ない試合でやったらしいんだが、メジャーの試合は広いアメリカを移動するため睡眠時間が取れなくて調整が難しいことがあるらしい。「普段から意識をしていないことを突然やれと言われてもできない」ということで、徹夜明けで試合に出たら「思った以上に打てた」。そして、メジャーで実際に一睡もしないで試合に出て6安打打った。その経験が必要かどうかもわからないのに、わざと自分を追い込む状況を作ったというのがすごい。確かに一度経験するのと初めてでは対処が全然違うけども、そこまで準備するの?

イチローは天才と呼ばれたりするけど、本を読むと天才ではなく一流の職人なんだとつくづく思った。職人ゆえ、自分の技術力の維持には大きな努力を払い、プライドを持っているんだなあ。彼はあと10年経ってもチーズピザを食べて打席に立っているのだろうか。あまり野球には興味なかったんだけど、イチローは追ってみたいと思いました。

『また会いたくなる人 婚活のためのモテ講座 / 大橋 清朗』

また会いたくなる人 婚活のためのモテ講座 また会いたくなる人 婚活のためのモテ講座
大橋 清朗
講談社 2009-01-08
内容(「BOOK」データベースより)
出会いさえあれば、結婚できると思っていませんか?日本で唯一の花婿学校講師が教える必ず成功する男と女の婚活ノウハウ。男も女も「いい物件」は、すぐに売れてしまいます。そして、歳をとればとるほど、あなたの「市場価値」は低くなり、いい物件を選びたくても、選べなくなってしまうのが現実です。「いつかは婚活」では遅いのです。期間と期限を決めて、今すぐ「婚活」をはじめてください。
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婚活ノウハウ本。

いやいやいや!私が婚活に目覚めたわけではなくて!(目覚めてもいいけど) 先日会ったMZの女子から回ってきたのですよ。ちょうど電車で読む本がなかったので引き取ってきました。

婚活という単語もずいぶんと世間に浸透してきたようですが、いやー、すごいね。現実を突きつけられました。王子様は来ないのですよ、相手から「選ばれる」にはどうするべきかと滔々と述べられており、「結婚したいなー」なんて愚痴る前にこれだけの努力をしろ!とありました。

要点をまとめると、第一印象の見た目から入るのでそれぐらいの努力はしろってことだったかな。女性雑誌の「彼に気に入られるためのうんちゃら」というのと似てると思った。とりあえずフェミニンな格好をして隙を見せろと。話はそこからのようです。よし、脳内メモはした。実行するかは知らん。

『頭のいい段取りの技術 / 藤沢 晃治』

頭のいい段取りの技術 頭のいい段取りの技術
藤沢 晃治
日本実業出版社 2007-12-20
内容(「BOOK」データベースより)
段取りの基本は「サービス精神!」。「フェイルセーフ思考」で1万分の1の失敗に備えよ。仕事が劇的に速くなる「クリアスペース」。仕事の確度を高める「フォーナイン」仕事術。「デフォルト指定」で余計な作業をカットできる。複雑な仕事をラクラクこなす「クリティカルパス」。速く正確に仕事をこなす残業知らずのテクニック。
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ビジネス系の書評で評価されてたから読もうとしたんだっけな?

ただ内容的にはよくあることで、特に目新しいことはなかった。ひとつ新しかったのは、資格試験などの勉強をするときに、勉強しなきゃいけない量(参考書や問題集など)を棒グラフ化して進捗率を出すということ。仕事で進捗率はよくやることだけど、勉強に適応するのかあ。へえ。そうすると「ここまでやったから」ともったいないお化けが出て挫折が少なくなるとか。

段取りが良いというのは、物事の流れをちゃんと掴むことと不足の事態にも備えるということなんでしょうか。著者も書いてるけど、小心な人こそそういうのが上手いのかもしれません。

たぶん今度の私の仕事にはあまり関係ないんですけど(人間アラームだったら段取りなんかする必要がない)、こういうテクニックの本って「伊藤家の食卓」のようで面白いね。

『はじめての哲学史 / 竹田 青嗣、西 研 』

はじめての哲学史―強く深く考えるために (有斐閣アルマ) はじめての哲学史―強く深く考えるために (有斐閣アルマ)
竹田 青嗣 西 研
有斐閣 1998-06
内容(「BOOK」データベースより)
哲学者たちは、何を問い、どう答えてきたのか。彼らとともに、「原理的な思考」の可能性を探る新しい哲学入門。
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245 :名無しさん@6周年:2005/10/20(木) 21:23:26 ID:———

大学に行くと 数学は哲学に、哲学は歴史学に、歴史学は地理学に、地理学は地学に 地学は物理学に、物理学は数学になります 。

2chのコピペだけど、上手いこと言うなあと思った。そーなんだよ、大学で習う哲学は歴史学なんだよ。でも自分の哲学を追求する前に知識として必要なんだろうね。大抵の悩みは前人が悩んでるから。

先日、ドラゴン桜の感想を書いてて、大学選びの時期を思い出した。私は哲学を選んだんだけど、理由が「哲学は一生つきあっていける学問だから」──だったんだよね。それを思い出して「あれ?ここ数年、哲学とつきあってないなあ」と反省。

そういうわけで、いまさらながら記憶を戻すために哲学史再読でした。あれだね、この歳になって読むと新鮮なことが多いね。私は何にでも理由付けをしたくなるので、うっとおしいなあと自分でも思ってたのですが、人類は昔から理由を探しており(存在意義とか世界の理とか)ギリシャ時代から変わってないなあと思った。人間ってそういう生き物なんだなあ。

近代哲学のヘーゲル、フッサールあたりになって目が滑った。入門書なのに(笑)。これ以降の哲学ってどうも言葉が頭に入ってこない。独自の言葉遣いをしているからなのか、そのまえまでの思想の流れを抑え切れてないのか。人の思想を理解するには、本当は原書を読むのが一番いいんだろうけど、哲学は哲学なりの用語があるのでそれを理解するまでが難しい。数学と一緒で数式をわからないと論文が読めない感じか。もう一冊ぐらい近代哲学入門を読みたいと思う。

『恐るべき旅路 / 松浦 晋也』

恐るべき旅路 ―火星探査機「のぞみ」のたどった12年― 恐るべき旅路 ―火星探査機「のぞみ」のたどった12年―
松浦 晋也
朝日ソノラマ 2005-05-21
内容(「BOOK」データベースより)
宇宙へと産み落とされた嬰児「のぞみ」は、いってみればよちよち歩きを始めたばかりだ。それを、子供の目の前で手をたたくようにして火星まで導かなければならない。あんよはじょうず、あんよはじょうず。それは苦難に満ちた旅の始まりだった。あいつぐトラブル。それでも「のぞみ」は二十七万人の祈りと希望をのせて火星へと飛び続けた。火星探査機「のぞみ」の苦闘のすべてを描く、迫真の科学ドキュメンタリー。
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熱のとき宇宙衛星でうなされたのはこの本読んでたせいだな。

これは国産初の惑星探査機「のぞみ」に関する一連のドキュメント。面白かった。火星探査機「のぞみ」が失敗したニュースはなんとなく知っていたが、やっぱり宇宙は難しいんだなあぐらいの認識しかなかった。しかし、この本を読むとその探査機を作るまでの下地、トラブルになった原因、そしてその原因究明の努力(実に1ビットの通信!)など、日本の技術者の奮闘振りに感動させられた。

なんとなくWindows NTを開発した人の話を思い出す。大きなプロジェクトというのは人とのやりとり(根回し)が必要なんだなあ。そして何より「あ、そうか!」と思ったのは、宇宙空間での探査機の姿勢について。上下左右のない宇宙空間では別に探査機の正面なんて問題ではないと思っていたんだけど、太陽からのエネルギーを受ける位置と地球へ通信を飛ばす位置というのが重要だとあり、確かにそのとおりだと思った。それでエネルギー供給しつつ、観測結果送るんだもんなあ。地球とやりとりできるのがすごいよ。

惑星を使ったスイングバイ(惑星重力を使って軌道を加速する)や、マイナス数十度と百度越えの温度差への機器管理、滅菌管理をしていない人工物体が20年以内に火星に落ちる確率は1%に抑えなければならないという国際基準などが新しかった。最後の基準により、火星軌道に入るのが難しいとされた「のぞみ」は火星の上空1000kmを通過することとなった。わざと外したんだね。

宇宙開発はお金がかかる。結局、そのお金を削ったせいで…と短絡的な考え方はできないかもしれないが、個人的には未知の分野にはお金を回して欲しい。昨今の厳しい情勢を見ると、予算繰りが難しいだろうけど、アメリカなどの大国だけが牛耳るんじゃなくて、国産の惑星探査機をぜひまた飛ばしてもらいたい。

のぞみは二十七万人の署名を載せて飛んだらしいけど(知らなかった!)、やっぱり宇宙への憧れってこうだよね、という引用をば。

おおきくなったらいっくんとうちゅうにいきます。(ようくん)
おおきくなったらようくんとうちゅうであそびます。(いっくん)

『赤い羊は肉を喰う / 五條 瑛』

赤い羊は肉を喰う 赤い羊は肉を喰う
五條 瑛
幻冬舎 2007-01
内容(「BOOK」データベースより)
昔ながらの雰囲気が残る下町・八丁堀にある弱小リサーチ会社に勤務する内田偲は、単調だが平穏な日々を愛し楽しんでいた。しかし八丁堀にはなぜか少しずつ不穏な空気が流れ始め、犯罪が不自然なほど急増していく。ほんの好奇心から原因を探る偲。そしてついに知り合いの女子大生が失踪し死体で発見されてしまう…。ナチス・ドイツに連なる大衆心理操作の恐怖、そして人間の”愚かしさと愛しさ”を精緻な筆致で描く鮮烈エンターテインメント。
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五條祭り開催の予感と昔書いていたようなんだが、結局2冊しか読んでない自分を笑った。

そんな理由で五條さん再び。これは、いわゆる鉱物シリーズと呼ばれるものの番外編。ちらほらと知ってるキャラクターが登場するが、主人公はまったく別の人。この本のテーマがなかなか面白かった。大衆心理の操作と数値を具象化するということだったんだが、繰り返し出てきたモチーフが興味深い。

ペンギンは、しょせんペンギンだ。一羽の行動に釣られ、他も同じ行動を起こす。羊はしょせん羊だ。オオカミが一匹いれば、百匹の群でも立ち向かうことはせず、柵に追い込まれて行く。その習性さえ理解していれば、コロニーを操作するのは簡単だ。

ペンギンは群れで行動するとき、最初の一羽の行動を真似するらしい。確かに一羽が水に飛び込むと他のも飛び込んでいる映像が記憶にある。あと羊は最後の一匹が行動を決めるともあったけど、そうなのかな。これらを大衆操作と結びつけて物語は進んでいく。

この話では、一つのファッションブランドを通じた一般大衆の心理、流行、消費について語っているんだけど、面白い論調だった。常々、車内広告などにある流行は仕掛けられていると思うんだが、それらが悪意ある方向になったらどうなるのかね。昨今、マスコミの偏向報道もネット上では話題になっていることだし、そんなに遠い話題ではないかもしれない。

ところで私は五條さんの作品をいったいどこまで読んだのかしら。Amazonのリストを見ては首を傾げている今日このごろです。

『ジャッカルの日 / フレデリック・フォーサイス』

ジャッカルの日 (角川文庫) ジャッカルの日 (角川文庫)
フレデリック・フォーサイス / 篠原 慎(訳)
角川書店 1973年
出版社/著者からの内容紹介
暗号名ジャッカル‐ブロンド、長身、ひきしまった体躯のイギリス人。プロの暗殺屋であること以外、本名も年齢も不明。警戒網を破りパリへ…標的はドゴール。計画実行日”ジャッカルの日”は刻々と迫る!
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画像は2000年版ですが1973年に出た小説です。ゴルゴ13を地でいく内容です。このタイプの小説はスリラーと呼ばれるジャンルらしいんだけど、こういうの好きなんです。

で、この「ジャッカルの日」は古典的な作品だということで読んだんだけど、なるほどこの書き込み具合は高村薫を彷彿とさせる(彼女が影響受けてるのか)細かい描写でした。ただ登場人物が多いうえに外人名なので、どうもうまく把握できずに読み終わってしまった感もあります。

ちょっと内容が古いのと読みにくいのをのぞけば、そこそこ楽しめる内容でした。フォーサイスは実際フランスで特派員をやっていたので、このドゴール暗殺未遂はどこまでフィクションが混ざっているのか気になるところです。

フォーサイスは筆を折ったと思っていたんですが、復活なさってたんですね。「神の拳」は読んだことがあるんだけど、他の作品も読んでおくべき?