『イチローの流儀 / 小西 慶三』

イチローの流儀 イチローの流儀
小西 慶三
新潮社 2006-03-29
内容(「BOOK」データベースより)
他人と同じ方向は見ない。「一生懸命」と自分で言わない。常に同じリズムで行動する…最も多くの試合を観てきた記者が綴る天才打者の流儀。大記録達成前の苦悩、スランプ脱出法、試合前の徹底した準備、未公開のオフの過ごし方、ドラマ出演の背景などあらゆる局面に密着。限りない進化の秘訣を解明する。
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WBC効果(笑)。

あまりにイチローが格好良すぎたので、ちょっと読んでみようという流れ。彼のビッグマウスというかナルシストな発言にひくときもあるんですが、なんにしても結果を出してるんだからすごい。そして本を読んだらもっとすごい人だった。

彼は打てていたときでも、自分の身体に違和感(上体の固さ)を感じたら、それを治すように調整した。その微細な感覚がわかる彼は、自分の身体と対話ができる人なんだろう。有名な話だけど、彼は自分のバット以外を持つことはしない。人のバットの重さによって自分の感覚が狂わされるのが嫌だからだ。そして自分のコンディションを整えるための同じリズムでの生活。地元なら7年間奥さんのカレーを食べ、遠征先では某チェーン店のチーズピザを食べ(具がないので味にばらつきがないからだそうだ)、マイ枕を持って移動し、同じ手続きを踏んでバッターボックスに入る。その同じ作業のなかで、彼は自分の身体と対話して差異を調整し、プロとして走っているんだなあ。

120%の準備という点で驚いたのは、彼が眠らずに試合に出たという経験があること。これは日本時代、ペナントレースに関係ない試合でやったらしいんだが、メジャーの試合は広いアメリカを移動するため睡眠時間が取れなくて調整が難しいことがあるらしい。「普段から意識をしていないことを突然やれと言われてもできない」ということで、徹夜明けで試合に出たら「思った以上に打てた」。そして、メジャーで実際に一睡もしないで試合に出て6安打打った。その経験が必要かどうかもわからないのに、わざと自分を追い込む状況を作ったというのがすごい。確かに一度経験するのと初めてでは対処が全然違うけども、そこまで準備するの?

イチローは天才と呼ばれたりするけど、本を読むと天才ではなく一流の職人なんだとつくづく思った。職人ゆえ、自分の技術力の維持には大きな努力を払い、プライドを持っているんだなあ。彼はあと10年経ってもチーズピザを食べて打席に立っているのだろうか。あまり野球には興味なかったんだけど、イチローは追ってみたいと思いました。