グルメのための文芸読本 (朝日文庫) 朝日新聞社 1986-11 内容(「BOOK」データベースより) 博識と食欲を以て鳴る文芸批評家は、かつて『アンナ・カレーニナ』冒頭に登場する生牡蛎に生唾を飲んだ少年だった。文学作品に描かれた珍味佳肴を想像裡に味わいつくすことは読書の楽しみのひとつ、と断言する著者が、古今東西の詩文から口腹の楽しみを集めた、舌で読むアンソロジー。
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グルメ本というか、古今東西の本から食べ物の描写を抜き出した本ですね。
意外だったのは、思ったほどお腹空かなかったこと(笑) 食べ物ばかりの話だと美味しそうでお腹空くかなあと思っていたんだけども、やっぱり一文だけ抜き出すと背景描写がわからないのでそこまで雰囲気を感じないからかな。
それでもやっぱり数ある食べ物の描写の数々を見せ付けられると、やっぱり食べ物っていいよねえと思うことしかり。それではひとつ蜜柑の引用をば。中国の張岱(ちょうたい)という人の「陶庵夢憶」という本らしい。自家の近くの果樹園にできる極上の蜜柑について、そこの園主の凝り性ぶりを書いた描写。
「青いうちはちぎらぬ。酸いうちはちぎらぬ。木の上で紅くなるまではちぎらぬ。霜が下りなければちぎらぬ。蔕(へた)と一緒に剪(き)らなければちぎらぬ。だからそのちぎった蜜柑の皮は極めて剥き易くて、深黄色、中の袋は堅いけれどもぽろっと剥けるし、筋は簡単にほぐれ、味は甘くて新鮮だ」
こたつに蜜柑の季節だねえ。