『恐るべき旅路 / 松浦 晋也』

恐るべき旅路 ―火星探査機「のぞみ」のたどった12年― 恐るべき旅路 ―火星探査機「のぞみ」のたどった12年―
松浦 晋也
朝日ソノラマ 2005-05-21
内容(「BOOK」データベースより)
宇宙へと産み落とされた嬰児「のぞみ」は、いってみればよちよち歩きを始めたばかりだ。それを、子供の目の前で手をたたくようにして火星まで導かなければならない。あんよはじょうず、あんよはじょうず。それは苦難に満ちた旅の始まりだった。あいつぐトラブル。それでも「のぞみ」は二十七万人の祈りと希望をのせて火星へと飛び続けた。火星探査機「のぞみ」の苦闘のすべてを描く、迫真の科学ドキュメンタリー。
Amazonで詳しく見る
by G-Tools

熱のとき宇宙衛星でうなされたのはこの本読んでたせいだな。

これは国産初の惑星探査機「のぞみ」に関する一連のドキュメント。面白かった。火星探査機「のぞみ」が失敗したニュースはなんとなく知っていたが、やっぱり宇宙は難しいんだなあぐらいの認識しかなかった。しかし、この本を読むとその探査機を作るまでの下地、トラブルになった原因、そしてその原因究明の努力(実に1ビットの通信!)など、日本の技術者の奮闘振りに感動させられた。

なんとなくWindows NTを開発した人の話を思い出す。大きなプロジェクトというのは人とのやりとり(根回し)が必要なんだなあ。そして何より「あ、そうか!」と思ったのは、宇宙空間での探査機の姿勢について。上下左右のない宇宙空間では別に探査機の正面なんて問題ではないと思っていたんだけど、太陽からのエネルギーを受ける位置と地球へ通信を飛ばす位置というのが重要だとあり、確かにそのとおりだと思った。それでエネルギー供給しつつ、観測結果送るんだもんなあ。地球とやりとりできるのがすごいよ。

惑星を使ったスイングバイ(惑星重力を使って軌道を加速する)や、マイナス数十度と百度越えの温度差への機器管理、滅菌管理をしていない人工物体が20年以内に火星に落ちる確率は1%に抑えなければならないという国際基準などが新しかった。最後の基準により、火星軌道に入るのが難しいとされた「のぞみ」は火星の上空1000kmを通過することとなった。わざと外したんだね。

宇宙開発はお金がかかる。結局、そのお金を削ったせいで…と短絡的な考え方はできないかもしれないが、個人的には未知の分野にはお金を回して欲しい。昨今の厳しい情勢を見ると、予算繰りが難しいだろうけど、アメリカなどの大国だけが牛耳るんじゃなくて、国産の惑星探査機をぜひまた飛ばしてもらいたい。

のぞみは二十七万人の署名を載せて飛んだらしいけど(知らなかった!)、やっぱり宇宙への憧れってこうだよね、という引用をば。

おおきくなったらいっくんとうちゅうにいきます。(ようくん)
おおきくなったらようくんとうちゅうであそびます。(いっくん)