文化庁メディア芸術祭

20090214.jpg今年は初めて遭うお友達のみんちゃんが「文化庁メディア芸術祭があるんだけどどう?」というので、六本木の国立新美術館に行ってきた。いやあ、今日は暖かったですね。コート要らなかったよ。

芸術祭のほうは人が多かったー!無料ということもあるのかもしれないけど、インタラクティブの展示物なんて列が出来て並ぶのが面倒なので試すことができなかった。これは平日にゆっくりと観たらかなり面白い美術展だと思うのだけど、そこがとても残念だ。内容よりもとにかく人の多さに疲れた……

もういいや、美味しいもの食べよう!と二人して意気込んだのはいいんだけど、しょっぱいもの(パスタ)と甘いものが食べたいと考え、イタリアンを探すも店がわからずしばらく彷徨う。ここの店にしてみようと入ったジリオーラという店は、値段の割りに味は普通だった。じゃあ甘いものをば……と川島なお美と結婚したことも話題であるパティシエ鎧塚俊彦さんのケーキをテイクアウトして家で食べたら、これまた普通だった(まだ一つしか食べてないけど)。どうも今日はハズレとまではいかないけど、「当たり」というレベルではなかったようです。なので写真は載せない。

久々に外に出て思ったんですけど、人がいっぱいいるとストレス溜まりますね。イライラするの。こんなんで働きに出られるのかしら。おまけにどうも鼻がムズムズすると思ったら、花粉飛んでるんですか?引き篭もりだから全然知らなかったよ……。

+1人 計9人

『河童が覗いた仕事師12人 / 妹尾 河童』

河童が覗いた仕事師12人 河童が覗いた仕事師12人
妹尾 河童
平凡社 1987-07
内容(「BOOK」データベースより)
仕事の秘密、ヒストリー、誰にも語らなかったエピソードetc…。背景まで描きだされた”人物像”。時代の今をリードする12人の男たちの素顔!異色の立体対談集!
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今から20年ほども前の本なんだけど、なかなか楽しめた。

今で言う大御所の方との対談ですが、彼らの若い頃の無鉄砲ぷりというか苦労話なんかを織り交ぜて、プロという人はこういう道を経てプロになるんだなあという感じ。対談してる妹尾さんの人柄や、彼らとの仲の良さがうかがえる点もまたよろしい。

シェフの三國さんの経歴なんて面白かった。北海道から出てきて鍋洗いから始めてるの。帝国ホテル後、駐スイス日本大使館のシェフに抜擢されるも、和食も中華料理も知らないから料理の本と共に現地へ。たぶん最初のレセプションは仏料理だろうと考え、着いたら町の最高の仏料理のレストランへ行ってくれと、そこで一週間研修して料理を出す。そういった綱渡り状態でやっていたそうだ。今日習ったものを二十時間後に出さなきゃいけないから練習のため寝る時間がなかった、なんてすごい。

立花隆さんの「二十歳のころ」のような雰囲気の本だったかな。

『100年の難問はなぜ解けたのか / 春日 真人』

NHKスペシャル 100年の難問はなぜ解けたのか―天才数学者の光と影 (NHKスペシャル) NHKスペシャル 100年の難問はなぜ解けたのか―天才数学者の光と影 (NHKスペシャル)
春日 真人
日本放送出版協会 2008-06
内容(「BOOK」データベースより)
ついに「ポアンカレ予想」が解決した!ところが…。世紀の難問に挑み、敗れ去った幾多の数学者と見事に解決したにもかかわらず姿を消した天才グリゴリ・ペレリマン。数学という魔物がもたらす数奇な運命とは―。
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去年の3月に動画を観たのが私のブーム到来でしたが、そのディレクターの人の書籍版。これは面白かった!

数学を知らない視聴者用に作ってるので数学的には物足りないのかもしれないけど、世紀の難問に挑んだ数学者たちやその歴史をわかりやすく伝えてくれている。入門書としては一番お勧め。厚くないし。

ポアンカレ予想に巻き込まれて人生変わってしまった数学者も多数いるようですが(証明したペレリマンもそうだけど)、今回知ったパパキリアコプーロス(通称パパ)というギリシャの数学者もまたストイックに問題に取り組んだ人だったようだ。修行僧のように毎日規則正しい生活を送って、数学に集中したいからと人前に出ることが少なかったらしい。生涯独身だったそうだけど、「これが解けたら、祖国に帰って自分に合う女性を探せるかもしれない。そのためにもポアンカレ予想を早く証明しなければ」と言ってたそうで、ポアンカレ予想は彼の責務のような仕事だったんだなあ。

ポアンカレ予想は100年かかって解かれたわけだけど、数学世界の七つの未解決問題(通称ミレニアム懸賞問題)はまだ6つも残っている。私が生きている間に問題を解いたというニュースは聞けるのかな。最後に本書より印象深かった一文を引用する。

数学者の好奇心は、南極や北極やアマゾンを発見した探検家たちとも変わりません。いまやこの地球上では、まったく未開拓だと思われる場所はだいぶ少なくなってきました。でも頭の中の知的世界には、何の制限もありません。未知なるものは無限にあるのです。

 

『コンセント / 田口 ランディ』

コンセント (幻冬舎文庫) コンセント (幻冬舎文庫)
田口 ランディ
幻冬舎 2001-12
出版社/著者からの内容紹介
ある日、アパートの一室で腐乱死体となって発見された兄の死臭を嗅いで以来、朝倉ユキは死臭を嗅ぎ分けられるようになった。兄はなぜ引きこもり、生きることをやめたのか。彗星のごとく出現し、各界に衝撃を与えた小説デビュー作。2000年6月に単行本で刊行、ついに文庫化。
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田口ランディの小説のほうも読んだ。

結論からいうと小説のほうが楽しめた。この作品は村上龍が褒めてたらしいが、さもありなん。人間の持つ生臭さあたりが両者に共通してる感じがした。

うーん、作家への雑音(盗作騒ぎとか私の作家に対する感想とか)が無ければ、自分にもハマる小説だったのかもしれない。あとセックス描写はそんなに必要だったのだろうか。肉体と精神の乖離の表現なのかしら?ちょっと陳腐に思えた。

コンセントで世界とのオン/オフを現すところとか、心理学とカウンセリングのあたりはなかなかでした。ユタとかシャーマンとか。

彼女の興味のあるものは私とかぶりそうなんだけども、さてはて今後読む機会があるかどうか。

『ほつれとむすぼれ / 田口 ランディ』

ほつれとむすぼれ ほつれとむすぼれ
田口 ランディ
角川書店 2004-03
内容(「BOOK」データベースより)
世界は新しい対立の時代に入った。いざこざや、怒りや、憎しみや、嘆きに身もだえしながら、夜になると寝て朝になれば目が覚める。そして食べて働いて生きる。小さな街の一断片として生きるのだ。営み生きるものの思いは繋がっている。その地上にはまだ光が満ちている。それがすべてだ―。生活の現場から、人間と社会の深層を見つめ続ける著者。その魂に映った「世界」とは?心に響くスピリチュアル・エッセイ集。
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合わない。この作家とはどうも合わない。

このエッセイを読んでて、「理不尽な怒り」(作中に出てくるフレーズ)がこみ上げてきたので、それはどうしてなんだろう?と自問自答しつつ読了した。「すげえ」とか「じゃねえの」といった単語が気になるのかしら?(私も使ってしまうけど) 「私は」「私は」的な面が気になるのかしら? 同じ女性だからなのかしら? どこか自分と似てるのだろうかしら、同属嫌悪? インターネットから出た作家だから、自分たちと同じ立場だった人がこうやって一説ぶるのが癪に触るのかしら? などなど考えてみたんだけど、ぴんとこない。どれも違う気がする。なんだろうね、これ。

なぜ田口ランディを読もうかと思ったかというと、この人の兄の話をネットで見たから。彼女の兄は働くことを拒否してひっそりと部屋で餓死したらしい。そして彼女は「生きるとは?」ということをずっと考え続けている。兄の記述にドキリとしたのだ。彼女の兄が何を考えていたのか知りたいと思って、エッセイを読んでみたのだけど、その話は少しだけだったので他のものを読まないと駄目かもしれない。エッセイと小説は違うだろうから、あと一冊だけトライしてみようと思う。

初めて読んだ作家だけど、彼女が客観的に(自分を出さないで)書いているものは良いと思った。物事を自分で咀嚼しようとしてがんばってる姿が伺えて。でもそうじゃないものは我が強く感じる。読む前に彼女をもっと知っていれば(例えばブログとかインタビューとか)また自分の感じ方も違ったんだろうけど。

『漢方小説 / 中島 たい子』

漢方小説 (集英社文庫 な 45-1) (集英社文庫) 漢方小説 (集英社文庫 な 45-1) (集英社文庫)
中島 たい子
集英社 2008-01-18
内容(「BOOK」データベースより)
川波みのり、31歳、脚本家、独身。胃がひっくり返ったようになるのに、眠れないのに、病院に行って検査をすると『特に異状なし』。あのつらさは何?昔の男が結婚したショックのせい?それとも仕事のストレス?最終的にたどりついた東洋医学で、生薬の香りに包まれながら、みのりが得たものは。心と体、そして人間関係のバランスを、軽妙なテンポで書き綴る、第28回すばる文学賞受賞作品。
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普段こういった内容の本は読まないんですが、ほぼ日の「あの人の本棚」で紹介されているのを見て「漢方?」と思って読んでみました。

薄い本なので、軽く読めます。内容は、うん、まあ、30代女性はいろいろあるのね的なもので、個人的にはピンと来るものがなかったけど、体調(精神を含め)を崩す人が多くなるのねーと知った。こういう本を読むと、自分も大概病んでいる部類なのかしらと思ったりするけど、人間どこかしらそういうとこはあるからまあいいか。

肝心の漢方だけど、西洋医学と比較しての説明や陰陽五行説に基づいての考え方などはかなり面白かった。今後自分がどこか病んで、西洋医学でも駄目だったら試してみたいと思う。

日本もそうだけど、中国もこんなすごい文化があるんだから、あまり西洋化一辺倒にならずにうまいことこういうものと付き合っていければいいのに、と勝手ながら思った。洋食大好きな私が言える言葉ではないが。

ピカソとクレーの生きた時代

20090122_2.jpgBunkamuraのピカソとクレーに行ってきた。

平日なので(おまけに雨だったし)かなり空いていてなかなか良かった。友人と二人で音声ガイドを借りて観てたんだけど、やっぱりガイドは空いてる会場ではいいね。かなりじっくりと作品と向き合えると思います。

しかしこの展覧会、去年行ったデュッセルドルフにある美術館から借りてるとは知らなんだ。意外な繋がり。

さて、展覧会のほうはクレーが主なのかと思ったら、新印象派、フォーヴィズム、キュビズム、シュルレアリズムなどの流れがよくわかる展示で、近代の西洋絵画勉強のようでした。他にもミロ、マティス、シャガール、マグリットなどが数点あったし、なかなか豪華なのではないかしら。

クレーは本で見たよりも、本物のほうが断然色がきれいだった。あとクレーが感銘を受けたチュニジア旅行の赤と白の丸屋根という絵が、私のイメージする北アフリカをそのまま彷彿させた。今もそこで働いている友人を急に思い出したので、絵葉書を送ってみようとこの絵のポストカードを買う。

のんびり平日美術館は良かった。また行きたい。

『東京するめクラブ 地球のはぐれ方 / 村上春樹他』

東京するめクラブ 地球のはぐれ方 東京するめクラブ 地球のはぐれ方
村上 春樹
文藝春秋 2004-11-10
内容(「MARC」データベースより)
名古屋、熱海、ハワイ、江ノ島、サハリン、清里を、ムラカミ隊長と「東京するめクラブ」が徹底探検。近場の秘境、魔都、パラダイスでの驚天動地の発見満載の旅行記。『TITLE』連載を単行本化。
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クロちゃんからのおすすめでした。読了。

なるほど、これは一味違った旅行エッセイ。旅行というかヘンテコ箇所を中年3人が訪れてあれこれ言うという軽いタイプの読み物。村上ファンの方には彼の違う一面も見られて面白いかもしれません。村上さんは、自分を切り売りするのに抵抗を覚えてきたと、近年はエッセイを書かなくなってきたそうですが、それはとても残念。彼独自の物の見方は面白いよね。

この本の内容では名古屋にシビれたわ。あんな独自文化の発展したところだとは知りませんでした。名古屋、1、2回しか行ったことないんだよなあ。あの独特の食べ物、一回体験したいものです。

惜しむらくは、3人がそれぞれに文章を書くので本として文体のまとまりがないこと。まぁそれが「するめクラブ」なのかもしれませんが、やっぱり村上さんの文章が一番うまいので他の方々が見劣りしちゃうかな。あと吉由美さんと吉由美さん(平原綾香Jupiterの作詞家)を混同していたことにさっき気づいた。吉本さんがやったのかと思ってました。すいません。

『黄泉の犬 / 藤原 新也』

黄泉の犬 黄泉の犬
藤原 新也
文藝春秋 2006-10
内容(「BOOK」データベースより)
藤原新也インド旅伝説に新たに衝撃の一章が加わる!青春の旅を記録した処女作『印度放浪』から34年―その長きにわたって著者が封印してきた衝撃の体験がついに明かされる!『メメント・モリ』の感動を再び甦らせる。藤原新也、インド紀行完結篇。
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読書のいうのは、その本と受け手のバイオリズムがうまく合ったときに「腑に落ちる」的なものがあるんだと思うんだけど、今回は自分にとってそういった類の本だった。

藤原新也という作家とは御多分に漏れず、十年くらい前の「メメント・モリ」が最初の出会いで、ずっと写真家のイメージだった。しかし、今回文章を読んで万人向けではないかもしれないが、ある種の人間には非常に惹きつけられる文章を書く人だと知った。

この本はオウム真理教の麻原の兄へのインタビューの前半と、インドでの話の後半の2つに分けられる。前半も新しい切り口で面白いが、個人的には後半が良かった。インドの宗教観、サドゥや火葬場に、自分のインド旅行が鮮やかに思い出された。あと、この内容紹介はちょっと的外れな気がする。あの時代の宗教(自分探し)に走った若者を非常によく描いてると思うのに、これだと紀行文のようじゃないか。

読んでる途中にふと気づく。「そうか、自分は現実性(リアリティ)を人生に求めてるのかもしれん」 

大学生活に倦んで、インドに行ったら何か変わるかしらと行ったのが最初の海外旅行だった。衝撃は大きかったけど、結局は何も自分のなかでは変わらなかった。それじゃあと、とりあえず30歳まで仕事してみたけど、特に人生かけて熱くなれるような出来事がなかった。んじゃんじゃ、海外で生活したら変わるのかしらとアフリカ行ったけど、やっぱり変わらなかった(むしろ駄目になった・笑)。ちなみに「何か変わる」というのは自分の内的なもの。この醒めてる感覚とか生きるの面倒くさいとか、そういうの。

つまり、自分が人生において追い求めてるのは「生きている」というリアルの感覚なのかなあと。最近の自分流行のジョギングも、頭で考えることから肉体を使うということにスライドさせて、生のリアリティを求めてるのかもしれない──なんてそこは考えすぎか。しかし、こういうことを考え続けて、自分に酔うのも気持ち悪いのでまぁ程々に。

以上、まったく本の感想にはなってませんが、私にはそういったことをつらつらと考えた本だった。非常に個人的な「出会い物」な一冊。他の藤原さんの本も読む予定です。

 

『テロリストのパラソル / 藤原 伊織』

テロリストのパラソル (角川文庫) テロリストのパラソル (角川文庫)
藤原 伊織
角川書店 2007-05
内容(「BOOK」データベースより)
ある土曜の朝、アル中のバーテン・島村は、新宿の公園で一日の最初のウイスキーを口にしていた。その時、公園に爆音が響き渡り、爆弾テロ事件が発生。死傷者五十人以上。島村は現場から逃げ出すが、指紋の付いたウイスキー瓶を残してしまう。テロの犠牲者の中には、二十二年も音信不通の大学時代の友人が含まれていた。島村は容疑者として追われながらも、事件の真相に迫ろうとする―。小説史上に燦然と輝く、唯一の乱歩賞&直木賞ダブル受賞作。
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2007年とありますが、元は1995年に講談社から発刊された本だそうです。史上初の江戸川乱歩賞と直木賞のダブル受賞だということで読了。

内容は程良いミステリーとハードボイルドの融合ということで、なかなかに楽しめました。キャラが立っているのと、台詞まわしなんかが気がきいてたよ。アル中オヤジ(しかもホームレス寸前)を格好よく書けるなんて素敵。でも個人的には、学生闘争のあたりが特に無くても問題ないような気がしたんだけどなあ。なんでだろうか。他の設定に置き換えてもいいような気もした。「シリウスの道」という話にこの登場人物がちらっと出てくるらしいので、機会があったら読んでみよう。

知らなかったのですが、作者の藤原伊織さんは2007年に59歳の若さで亡くなられてました。新しい作品が読めないのは残念ですが、ご冥福をお祈りいたします。