『100年の難問はなぜ解けたのか / 春日 真人』

NHKスペシャル 100年の難問はなぜ解けたのか―天才数学者の光と影 (NHKスペシャル) NHKスペシャル 100年の難問はなぜ解けたのか―天才数学者の光と影 (NHKスペシャル)
春日 真人
日本放送出版協会 2008-06
内容(「BOOK」データベースより)
ついに「ポアンカレ予想」が解決した!ところが…。世紀の難問に挑み、敗れ去った幾多の数学者と見事に解決したにもかかわらず姿を消した天才グリゴリ・ペレリマン。数学という魔物がもたらす数奇な運命とは―。
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去年の3月に動画を観たのが私のブーム到来でしたが、そのディレクターの人の書籍版。これは面白かった!

数学を知らない視聴者用に作ってるので数学的には物足りないのかもしれないけど、世紀の難問に挑んだ数学者たちやその歴史をわかりやすく伝えてくれている。入門書としては一番お勧め。厚くないし。

ポアンカレ予想に巻き込まれて人生変わってしまった数学者も多数いるようですが(証明したペレリマンもそうだけど)、今回知ったパパキリアコプーロス(通称パパ)というギリシャの数学者もまたストイックに問題に取り組んだ人だったようだ。修行僧のように毎日規則正しい生活を送って、数学に集中したいからと人前に出ることが少なかったらしい。生涯独身だったそうだけど、「これが解けたら、祖国に帰って自分に合う女性を探せるかもしれない。そのためにもポアンカレ予想を早く証明しなければ」と言ってたそうで、ポアンカレ予想は彼の責務のような仕事だったんだなあ。

ポアンカレ予想は100年かかって解かれたわけだけど、数学世界の七つの未解決問題(通称ミレニアム懸賞問題)はまだ6つも残っている。私が生きている間に問題を解いたというニュースは聞けるのかな。最後に本書より印象深かった一文を引用する。

数学者の好奇心は、南極や北極やアマゾンを発見した探検家たちとも変わりません。いまやこの地球上では、まったく未開拓だと思われる場所はだいぶ少なくなってきました。でも頭の中の知的世界には、何の制限もありません。未知なるものは無限にあるのです。