『さらば、荒野 / 北方 謙三』

さらば、荒野 (角川文庫 (6022)) さらば、荒野 (角川文庫 (6022))
角川書店 1985-04

出版社/著者からの内容紹介
冬は海からやって来る。静かにそれを見ていたかった。だが、友よ。人生を降りた者にも闘わねばならない時がある。夜。霧雨。酒場。本格ハードボイルド、”ブラディ・ドール”シリーズ開幕!(生江有二)

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これまたチャンドラーの影響で、日本のハードボイルドって何だろうなあと思ったら、やっぱり北方兄貴だろうと思ってチョイス。

上のあらすじにもあるけど、バー・酒・ケンカ・銃・女みたいなキーワードの娯楽小説でした。出てくる男の人たちが渋いけど、女性の描写はありきたりだったなあ。しかし腎臓二つダメにして、人工透析を受けている人のあだ名にキドニーっつーのは、どういうネーミングセンスだ。

暇つぶしには良いかもしれんが、あまり面白いとは思わなかった。ブラッディードールシリーズとして9巻ぐらいあるらしいので、あまりに暇だったら続き読む。

『グレート・ギャツビー / スコット・フィッツジェラルド』

グレート・ギャツビー (村上春樹翻訳ライブラリー) グレート・ギャツビー (村上春樹翻訳ライブラリー)
Francis Scott Fitzgerald
中央公論新社 2006-11
出版社/著者からの内容紹介
村上春樹が人生で巡り会った最もたいせつな小説を、あなたに--新しい日本語で現代に甦る、哀しくも美しいひと夏の物語。満を持しての訳業。
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先日の村上訳がかなり良かったので、それではと「華麗なるギャツビー」をセレクト。ちなみに昔チャレンジしてダメだった過去がある。

なるほどー。こういう小説だったのか。しかし文がくどい。短い文のほうが好みなので、あまりに過多な修飾語には目がすべる。これがフィッツジェラルドの文体なのかしら。これも(自分の能力があがれば)原文を読んでみたい。あとはキャラクター内に好きな人間がいなかった。みんな好き勝手に生きてるんだもんなあ。

華やかなパーティー描写の裏になぜか感じる没落感。これから起きる悲劇を上手く練りこんでたのだろうか。あとは、ギャツビーが使う、オールド・スポート(old sport)っていう呼びかけ。これの雰囲気がよくわからんかった。どういう感覚の呼びかけ言葉なんだろうなあ。日本語でも、「ねえ、きみ」とか「おい、おまえ」とか「おお、わが友よ」なんて言い回しで二人の関係が変わる気がするんで、知りたいなあ。

正直、村上春樹が絶賛するほどの「すごい小説」という意味がわからんかったけど、「ふーん」と思って読みました。

『ロング・グッドバイ / レイモンド・チャンドラー』

ロング・グッドバイ ロング・グッドバイ
レイモンド・チャンドラー(著) 村上 春樹(訳)
早川書房 2007-03-08
出版社 / 著者からの内容紹介
テリー・レノックスとの最初の出会いは、〈ダンサーズ〉のテラスの外だった。ロールズロイス・シルバー・レイスの車中で、彼は酔いつぶれていた……。
私立探偵フィリップ・マーロウは、億万長者の娘シルヴィアの夫テリー・レノックスと知り合う。あり余る富に囲まれていながら、男はどこか暗い蔭を宿していた。何度か会って杯を重ねるうち、互いに友情を覚えはじめた二人。しかし、やがてレノックスは妻殺しの容疑をかけられ自殺を遂げてしまう。が、その裏には哀しくも奥深い真相が隠されていた……大都会の孤独と死、愛と友情を謳いあげた永遠の名作が、村上春樹の翻訳により鮮やかに甦る。
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なにこれ。ものすごく良かった。

ハードボイルド小説というジャンルが好きなんだけど、チャンドラーを読んだことなかった。そして村上春樹の翻訳というのも初めて読んだ。村上春樹の文体は、海外文学(こんな風に皮肉やウィットに飛んだ文章が多いものには特に)合うのかもしれない。翻訳ものって日本語が固くてけっこう読みにくかったりするんだけど、これはするすると読めた。

主人公フィリップ・マーロウとお酒の描写がまたいい。ジンを半分とローズ社のライムジュースを半分混ぜたギムレット。その酒を飲みながらバーでお互いに友情を感じあっていたマーロウとレノックスの決別が表現された名台詞、「ギムレットには早すぎる」(I suppose it’s a bit too early for a gimlet.)。レノックスが言った台詞だが、彼ももうあの時間が戻ってこないことをわかってたんだろう。

「さよならを言うのは、少しだけ死ぬことだ」(To say goodbye is to die a little.) なんつーのもかっこいい。これ、マーロウが一夜を共にした女の人と別れるときに言った台詞。

ミステリー(なのかな?)としての大きな流れも良いけど、細部の描写も台詞も格好いいこの小説、久々におすすめでした。もう1953年出版だからもう古典の域に入ってきてるけど、村上訳のおかげで現代でも全然遜色なく読めます。最近、ペーパーバック版も出たらしいので、ぜひ興味のある人はどうぞ。

『哲学のモノサシ / 西 研 (著), 川村 易 (イラスト) 』

哲学のモノサシ 哲学のモノサシ
西 研(文) 川村 易(絵)
日本放送出版協会 1996-05
内容(「MARC」データベースより)
壁につきあたったり、不安があって生きてることが苦しくなった時、なぜなんだろう、どういうことなんだろうと考え始める。その時ヒトは「哲学すること」の中にはいっている…。哲学とは何かをイラストと共に紹介する。
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哲学本ですがイラスト満載で、文字を読むというより、不思議なイラストと、「それってどういうことだろう。うーん?」とぼーっと考えるのに合っているように思いました。

哲学入門というか、それ以前の「哲学ってどんな学問なのかしら。なんで哲学ってあんなどうでもいいこと考えるのかしら」なんて疑問を持つ人が読むといいのかも。多感な時期の中・高校生が読むと人生変わるかもしれません(良い方向か悪い方向かはわからんけど)

哲学は面白いけど、それに気づかなければもっと楽に生きられるような気もするんだよなあ。

『スターバックス 成功の法則と失敗から得たもの / テイラー・クラーク』

スターバックス 成功の法則と失敗から得たもの スターバックス 成功の法則と失敗から得たもの
テイラー・クラーク 高橋 則明
二見書房 2009-03-30
内容(「BOOK」データベースより)
店舗数の拡大や収益の増大の裏で、スターバックス躍進の核心であった「味へのこだわり」「店舗の個性」など失われたものも多い。利益追求のあまり均質化し、個性がなくなってしまった。そのため他社との差別化もなくなり、容易に真似をされるようになったのだ―マクドナルドなどによるスターバックス包囲網や世界同時不況のなかで生き残る道はあるのか。
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昔はスタバに行くと心弾んだものですが、最近はそうでもないのです。店舗が増えて物珍しさがなくなったせいかなあと思ってはいたんですが、スタバ帝国について知るのもいいかとチョイス。

久々にスタバのコーヒーが飲みたくなる本でしたよ(同時にエスプレッソマシンも欲しくなったんだけど!)。 

エスプレッソをアメリカに広めたのはスタバらしいのですが(そのまえも何店かカリスマ的なお店があったようですが)、スタバ戦略とその興亡が読めて面白かった。最近のスタバが人気なくなっているのは、味のこだわりが落ちているとのことだったけど、その辺はよくわからない。でもフラペチーノなどは意外にカロリー高くて驚いた。キャラメルフラペチーノで320kcalぐらいあるらしい。えー!!

効率を求めるために、今のスタバはボタン一つでエスプレッソができるらしいけど(昔はバリスタの腕によったらしい)、確かに味が変わらないんだったら安いマックコーヒーで構わないと思う。

一消費者として、果たしてスタバは巻き返しをはかるのか、それとも店舗縮小でいくのか、非常に興味がでてきました。そして、そのうちスタバにエスプレッソをワンショット加えたラテを頼んでみようと思っています。

『霊柩車No.4 / 松岡 圭祐』

霊柩車No.4 (角川文庫)

霊柩車No.4 (角川文庫)
松岡 圭祐
角川書店 2006-10-25
内容(「BOOK」データベースより)
その遺体、自殺じゃないな…。騒然とする現場で、ちょっとした痕跡から、死の真実を見破った男がいた。怜座彰光、39歳。数多くの遺体を回収し運んできた長い経験で培われたその鋭い観察眼は、物言わぬ遺体に残されたわずかな手掛かりを捉え死因を特定し、真実を看破する。知られざる職業、霊柩車ドライバーの舞台裏に迫り、陰謀に挑む孤高の男の大胆な活躍を描く異色の大型エンターテインメント。新しいヒーローの誕生。
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なぜかよくわからんが、隣の席のおじさんが薦めてきたので読了。薄い本だったので、すぐ読めました。

「おくりびと」が話題になった昨今ですが、霊柩車のドライバーの話は新しかった。「そうきたかー」という展開もなかなか。

暇つぶしにはいいんじゃないでしょうか。繰り返すけど、何でおじさんから薦められたのかよくわからんのだけど。

『ヘラクレイトスの火 / E. シャルガフ 』

ヘラクレイトスの火―自然科学者の回想的文明批判 (同時代ライブラリー) ヘラクレイトスの火―自然科学者の回想的文明批判 (同時代ライブラリー)
E. シャルガフ 村上 陽一郎
岩波書店 1990-10
内容(「BOOK」データベースより)
われらの時代の最大の科学のドラマ―分子生物学の誕生と生化学の確立に深くかかわった科学者が自らの研究生活を回想し、現代科学文明を鋭く批判、そのあるべき姿を示す。世紀末ヴィーン、二つの世界大戦を含む激動の時代のベルリン、パリ、アメリカの諸都市の様相も活写され、「青春の文学」とまで評価された自叙伝の名著。
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これまた100冊なんだけど、正直どこがおすすめなんだかわからんかった。

退任を迎えた科学者のアイロニーのきいた文章と膨大な文学的知識(特に言語学とか!)を持って論じてるのはわかるんだけど、いまいち何が言いたいのかわからんのよ。科学者のつれづれエッセイというならわかるんだけど、そんなにおすすめされるほどのものかなあ?というのが私の感想。

うーん、ごめん。本当によくつかみどころがわからなかったので、感想の書きようがない。いろんな時代を生きた科学者のつぶやきといったところか。これを大学教授が薦めるというのは、終わりが見えてきた大学教授が自分の研究人生を振り返ったときに、思い当たることがあるということなのかしら。

内容が難しいというほどでもないんですが(もちろん自分が引用に出てくる知識を網羅できるレベルではないんだけど!)、頭にすんなり入ってこない本でした。

『知的複眼思考法 / 苅谷 剛彦』

知的複眼思考法 知的複眼思考法
苅谷 剛彦
講談社 1996-09
内容(「MARC」データベースより)
常識にとらわれた単眼思考を行っていては、いつまでたっても「自分の頭で考える」ことはできない。自分自身の視点から物事を多角的にとらえ、考え抜くための具体的手法をわかりやすく説く。
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100冊のなかの本。東大の先生が書いているのだが、大学生になって論文を書くのであれば読んでおくと良いのかもしれん。(どうでもいいことだが、図書館で借りた本だったので本に線が引いてあってカチンときた。気になって自分の視点で読めないじゃないか!公共のものに線を引くとは何事だ!! ぷんぷん。)

物事をいろんな視点で見るというのは必要だなあとわかっているのだが、その方法ってよくわからんよねというあたりに、具体的な方法を提示している点が良かった。一人ディベートは、むかついてること(例えば仕事とか)を冷静に考えるのにいいなあと思った。やっぱり自分の立場とは反対の立場(会社とか)の物の見方を考えるのは良いかも。あと代案がないと批判にならんよ、ということもやっぱりそうよね。文句じゃなくて批判に変えるのは結構難しい。

あとは、マジックワードを使わないで考えるということにはなるほど。マジックワードというのは、使われる文脈を離れて一人歩きする単語、例えば「自然破壊」とか「人権」とか「インターネット化」とかそういう抽象的な概念のことを指している言葉。うまい例を思いつかないのだが、例えば私が「自然破壊が人間をダメにした」なんて言ったとする。なんとなくわかったような気になるけど、自然破壊ってなによ?っていう話。オゾン層?森林伐採?温暖化?そもそも何をして自然破壊というのか?それと人間がダメになるとは何の関係が?という風に、つきつめるとおかしいんだけど、マジックワードを使うと考えが止まってしまうという例。しかし、著者はこんな説明をしていなかったので、この捉え方は私が間違って受け止めているかも。

『ロケットボーイズ〈上〉〈下〉 / Homer H.,Jr. Hickam』

ロケットボーイズ〈上〉ロケットボーイズ〈下〉

ロケットボーイズ〈上〉〈下〉
Homer H.,Jr. Hickam 武者 圭子
草思社 1999-12

内容(「BOOK」データベースより)
1957年、ソ連の人工衛星スプートニクが、アメリカの上空を横切った。夜空を見上げ、その輝きに魅せられた落ちこぼれ高校生四人組は考えた―このままこの炭鉱町の平凡な高校生のままでいいのか?そうだ、ぼくらもロケットをつくってみよう!度重なる打ち上げ失敗にも、父の反対や町の人々からの嘲笑にもめげず、四人はロケットづくりに没頭する。そして奇人だが頭のいい同級生の協力も得て、いつしか彼らはロケットボーイズと呼ばれて町の人気者に。けれど、根っからの炭鉱の男である父だけは、認めてくれない…。のちにNASAのエンジニアになった著者が、ロケットづくりを通して成長を遂げていった青春時代をつづる、感動の自伝。
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これ映画になってましたっけ?いつか読もうと思って寝かしてあったのですが、読んだら面白くてすぐに上下巻読んでしまいました。

アメリカの炭鉱の町に生まれた著者がスプートニクの打ち上げに奮起して、自分でもロケットを打ち上げようと、最初は非協力的だった町の人を巻き込んでロケット作りにいそしむ話。1950~60年代のアメリカの高校生の生活や、炭鉱の町の雰囲気が伝わる本でした。文章も上手いよなあ。

プラネタリウムを作りました。」を読んだときと同じように、好きなことをやり続けるエネルギーは素晴らしいとやっぱり思った。そしてそれを暖かく見守る母やまわりの人々が良い。彼らはロケットの材料を得るために物々交換(労働)や厳格な父親との交渉を得て、難しい方程式を理解しようと教師に教えを請い、やがて9500mも飛ぶロケットを打ち上げる。すばらしい!

ただの成功自伝というわけじゃなく、コールウッドの町の人々の描写にも心温まる本。こういうのいいよねえ。

『星を継ぐもの / ジェイムズ・P・ホーガン』

星を継ぐもの (創元SF文庫) 星を継ぐもの (創元SF文庫)
ジェイムズ・P・ホーガン
東京創元社 1980-05
出版社/著者からの内容紹介
【星雲賞受賞作】
月面調査員が真紅の宇宙服をまとった死体を発見した。綿密な調査の結果、この死体は何と死後五万年を経過していることがわかった。果たして現生人類とのつながりはいかなるものなのか。やがて木星の衛星ガニメデで地球のものではない宇宙船の残骸が発見された……。ハードSFの新星が一世を風靡した出世作。
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実はSFの名作をいうものをあまり読んだことがない。なので、SFの名作との誉れ高い本を読んでみた。

うーん!なるほど!!これは面白かった!

見つかった死体から導き出される推理がミステリっぽくもあり、空想世界での造語満載のSFとは一線を画していると思った。科学的な理論がどこまであっているのか私にはよくわからなかったけど、それらの使い方もうまい。そしてスケールがでかいよ。それこそSF!

何度も言ってるけど、名作は名作と呼ばれる意味があるんだなあ。満足でした。