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ロング・グッドバイ レイモンド・チャンドラー(著) 村上 春樹(訳) 早川書房 2007-03-08 出版社 / 著者からの内容紹介 テリー・レノックスとの最初の出会いは、〈ダンサーズ〉のテラスの外だった。ロールズロイス・シルバー・レイスの車中で、彼は酔いつぶれていた……。 私立探偵フィリップ・マーロウは、億万長者の娘シルヴィアの夫テリー・レノックスと知り合う。あり余る富に囲まれていながら、男はどこか暗い蔭を宿していた。何度か会って杯を重ねるうち、互いに友情を覚えはじめた二人。しかし、やがてレノックスは妻殺しの容疑をかけられ自殺を遂げてしまう。が、その裏には哀しくも奥深い真相が隠されていた……大都会の孤独と死、愛と友情を謳いあげた永遠の名作が、村上春樹の翻訳により鮮やかに甦る。 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
なにこれ。ものすごく良かった。
ハードボイルド小説というジャンルが好きなんだけど、チャンドラーを読んだことなかった。そして村上春樹の翻訳というのも初めて読んだ。村上春樹の文体は、海外文学(こんな風に皮肉やウィットに飛んだ文章が多いものには特に)合うのかもしれない。翻訳ものって日本語が固くてけっこう読みにくかったりするんだけど、これはするすると読めた。
主人公フィリップ・マーロウとお酒の描写がまたいい。ジンを半分とローズ社のライムジュースを半分混ぜたギムレット。その酒を飲みながらバーでお互いに友情を感じあっていたマーロウとレノックスの決別が表現された名台詞、「ギムレットには早すぎる」(I suppose it’s a bit too early for a gimlet.)。レノックスが言った台詞だが、彼ももうあの時間が戻ってこないことをわかってたんだろう。
「さよならを言うのは、少しだけ死ぬことだ」(To say goodbye is to die a little.) なんつーのもかっこいい。これ、マーロウが一夜を共にした女の人と別れるときに言った台詞。
ミステリー(なのかな?)としての大きな流れも良いけど、細部の描写も台詞も格好いいこの小説、久々におすすめでした。もう1953年出版だからもう古典の域に入ってきてるけど、村上訳のおかげで現代でも全然遜色なく読めます。最近、ペーパーバック版も出たらしいので、ぜひ興味のある人はどうぞ。