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沈黙の春 Rachel Carson 青樹 簗一 新潮社 2001-06 内容(「MARC」データベースより) 自然破壊にとどまらず人間の生命の核、遺伝子直撃へと環境問題が加速度的に複雑化、深刻化しつつある今日、その危機を40年近く前にいちはやく指摘し、孤立無援のうちに出版された名著「生と死の妙薬」(64年刊)を新装。 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
100冊のなかの一冊。
今では当然のこととなっているけど、農薬の怖さを1962年に指摘しているこの本は、環境学・生物学・化学などを学ぶ人は読んでおいて損はない一冊だと感じた。
私も気軽に殺虫剤を使ってしまう傾向があるんだけど、怖いのはそれが残留して残るということ。草木がそれを取り込み、さらに上の捕食者が取り込み……と生の連鎖が続いて濃度があがり、最後に私たちにもそれが取り込まれてしまうということ。自分が知らず知らずのうちに、自分の撒いたものに汚染されてしまうというのはなんとも皮肉だ。
多くの例を用いて書かれているが、科学本としてはデータの引用などが少々あいまいな気もした(例の引用元は大事だよね?)。あと女性が書いているからか少々センチメンタルかなあと。自分の好みとして、科学本は淡々と事例と結果が述べられているのが好きなので。
DDTがものすごく危険な物質に書かれており(実際そうなのかもしれないけど)、本の解説で「DDTはアフリカではマラリア予防に使用され効果をあげた」というくだりを読み、ただただ悪いだけの化合物ではなかったのかなとも思った。
しかし生物界はすごい。人間がAという生物を殺そうとすると、Aと敵対していたBが爆発的に増えてBによる被害が起きてしまう。また、Aのなかでも化合物に適応した種が生まれ、以後その殺虫剤が効かないパワーアップした種となってしまう。いたちごっこだな。人間が他の生物をコントロールするのってやっぱり傲慢なのだろうか。
中国産の農薬問題が取りざたされている昨今だけど、ほんと化学農薬は怖いと思った。やっぱり少量でも体内に残留するのが怖いよ。いつか体内目盛りあふれちゃうのかもしれんしなあ。
面白い……というわけではないけど、考えさせられる一冊でした。