『アフリカを食べる / 松本 仁一』

アフリカを食べる (朝日文庫) アフリカを食べる (朝日文庫)
朝日新聞社 1998-07

内容(「BOOK」データベースより)
アフリカの人々は、サルを食べるが豚は食べない…なぜ?アフリカ通の著者が、大陸の風土・歴史を背景に、「食」を通じてアフリカの人々を描く。食が地域に根ざすものであること、文化の共存は他者の価値観を尊重するところに始まることを感じさせる、洒脱なアフリカ体験記。

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病院通いは4日ぐらい続いております。炎症反応が消えないんですよ。24日も、もう一度検査しに行くことになっちゃた。せっかくの休みをPCに張り付きってどういうことだ。いつもと変わらんじゃないか。

そういうわけで図書館にも行けてないので(痛くて)、家の本棚から拝借。いやー懐かしくもあり、知らないこともあって面白かった。著者は朝日新聞社のアフリカ駐在員で、まさに地元に根付いた「食」を描いてくれている。うまいこと言うなあと思ったのは、アフリカの食文化を総称して 「熱湯でこねた穀物の粉」を「トマトと塩味の肉煮込み汁」で食べる、と言ったのはそのとおり。

アフリカは食「文化」ではないかもしれないけど、それでも色々と食べ物があるのは確かで、著者は本当に現地の人と同じものを(好奇心で?)食べているのに好感が持てる。ヤギの血を飲んだり芋虫を食べたり羊の目玉を食べたり。日本人から見るとゲテモノのように思えるかもしれないが、現地の人が食べているものはそこに文化があるんだと思う。私らが生魚を食べるのも、ずいぶんと変に思われるようだしね。

思い返すのは、昔、MZでお手伝いさんに連れられて彼女の村に行ったときのこと。マンゴーで作ったお酒を勧められたのね。ペットボトルの容器に果汁をいれて自然発酵させたものだと思うんだけど、それをプラスチックの器でハイと渡され、恐る恐る飲んだら、周りに群がっていた村人たちがワッと喜んだこと。自分たちが食べているものを他人が食べてくれるというのは、何故だか人を連帯させる力がありますなあ。同じ釜の飯を食べた、じゃないけど。

あと協力隊の知人たちに感謝したいのは、その地域に友達が行ってたなあと思うと急に親近感が湧くこと(笑)。おかげでどこの地域の話を読んでも、興味深く読めました。

この本でMZを思い出していたら、たまたま元生徒からメールが来てあらまー偶然て続くわね。ほんと、たまーにだけどアフリカの青い空が懐かしく思い出されて行きたくなるときがありますよ。

『月と六ペンス / サマセット・モーム』

月と六ペンス (岩波文庫) 月と六ペンス (岩波文庫)
モーム(著) 行方 昭夫(訳)
岩波書店 2005-07
<表紙より>
皮肉な笑みを浮かべながら、自分は”通俗作家”だとうそぶいていたモーム(1874-1965)だが、その作品の底には、複雑きわまりない矛盾のかたまりとしての人間にそそぐ、<人間探求者>の飽くなき目があった。芸術の魔力に取り付かれた男の徹底したエゴイズムを、シニカルな筆致で巧みに描いてみせたモームの代表作。
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ここんとこ、DQ9に忙しくて通勤中に本を読んでなかったのですが(通勤中にDSをやるな!というご指摘はごもっとも)、点滴のために病院通いがあったので読了。

先日のゴーギャン展でゴーギャンに興味を持ったんですが、そういえば彼をモデルにした小説があったなあということで選びました。いや、なかなか面白かった。ゴーギャンがモデルというか彼を彷彿させるけども、うまくフィクションと混ぜ合わさっていた。語り手の小説家の青年の視点が冷静で少し皮肉もきいてて、こういう感じは好きだ。

ストリックランド(小説のなかの画家)は、かなりひどい男で、自分の芸術に向かって周りを巻き込んでいくんだけど、こういう男に惚れる女もいるわよねということで、ちょっとその女性側の気持ちがわかりかけてしまった。本当にゴーギャンがこういう人だったなら、前言撤回して「しょうがない」と言ってしまうかも。

題名が素敵ですが、この由来はモームの「人間の絆」という作品への書評で 「多くの他の若者と同じく、主人公のフィリップは『月』に憧れるのに夢中であったので、足元にある『六ペンス』を見なかった」とあったのから引用されたそうだ。ストリックランドは、美の理想(『月』)を追求しつづけ、世俗的な喜び、富、名声(『六ペンス』)などを投げ出す、ということらしい。なるほど。

『蝶狩り / 五條 瑛』

蝶狩り (角川文庫) 蝶狩り (角川文庫)
角川グループパブリッシング 2008-08-25
内容(「BOOK」データベースより)
女子高生、風俗嬢、キャッチガール、キャバクラ嬢。アイドルばりの恵まれた外見で流行の服に身を包む彼女たちが忽然と消えた。人捜し専門の調査事務所を営む桜庭は依頼を受け、腐れ縁で”逃がし屋”の御曹司・桧林と、親友でヤクザの二代目・松村の協力を得て、失踪した美女たちの行方を追う。彼女らに近づくにつれ明らかになる哀しい現実とは?艶やかさの内側に氷を隠した蝶たちに、ちょっとさえない探偵・桜庭が迫る。
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五條さんの既刊を読破せねばならぬ…!と思いつつ、このブログをはじめてから3冊しか読んでなかった。私が五條さんを評価するのは、女性向けのハードボイルド風というのもあるんだけど、彼女が自分の小説を「文学作品ではなくエンターテインメント作品でよい」とどっかで言ってるのをみてから。

格調高い文学作品も良いけど、やっぱり本は普通に読んで面白いのが一番良くない?

じゃーラノベでもいいのか!という話だけど、ラノベだっていいんだって。自分が面白ければ。文字の組み合わせでいろんな世界が出来て、その世界に浸れるなんて、なんて素敵な活字世界。

そうそう。この本の感想は 「渚ちゃんがかわいそうじゃない?!」 この一言に尽きる。どうも連載一回分が無くなったような結末だった。あれは未完じゃないの!?違うの?!

それなりに前半の内容は面白かったんだけどなあ。消化不良でした。出てくる男の人たちは相変わらず素敵だった。女子向けだが。

『マリカの永い夜; バリ夢日記 / 吉本 ばなな』

マリカの永い夜;バリ夢日記 マリカの永い夜;バリ夢日記
幻冬舎 1994-03
内容(「BOOK」データベースより)
蓮の花を見つめるマリカ。彼女にはまだいくつ、越えなくてはいけない悲しいことがあるのだろう。多重人格のマリカと10年の時を共にした元精神科医が見た、自由な魂たちの悲しみと希望の物語。そして、霊が肉を包む南の磁場での著者の体感世界を現わす「バリ夢日記」。初の書き下ろし小説+紀行。
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選んだ理由が俗っぽくて恥ずかしいんだが、ちょっと前にネットで吉本ばななのこのエッセイが話題になっていたのね。私としては、「気持ちはわかるが、チェーン店の居酒屋にお酒持ち込むのはどうよ。というか、こういうエッセイを書くとは、今の吉本ばななってどうなってるんだ?」と思ったのがチョイスのきっかけ。

吉本ばななといえば、私が学生時代にキッチンやTSUGUMIを読んで心をときめかせていたという(……)過去があるのでなんとも複雑なことであったよ。まあ、月日が変わると人も変わるわよね。

この本はバリ島の本。小説のほうは、多重人格の少女がバリ島に癒されるといった感じでまあ普通。エッセイのほうは、ところどころ鼻につく箇所があってやっぱり「えー」と思ったりした。というか私のエッセイが面白いと思う基準が年々厳しくなっている気もするが。

やっぱり「ふーん」という読後感ではあった。

東京 Jazz Festival 矢野顕子×上原ひろみ

20090904.jpg東京JazzFestival 2009@有楽町 国際フォーラム

  • NHK交響楽団 special guest ELDAR
  • Deutch Jazz Experience ウーター・ヘメル
  • 矢野顕子×上原ひろみ

すごいという話はみんちゃんから聴いていたけど、本当にすごかった。正直2回ぐらい泣いた。

金曜日の残業を交わしつつ、ぎりぎりで駆けつけた最初のパフォーマーであるNHK交響楽団がなんだかピンとこなかったので、外の屋台でご飯食べてた。なので、ドイツジャズは聴いてない。

しかしメインの二人、特に上原ひろみを初めて観たんだけど、あまりの上手さ・表現力にぶっとんだ。またいい表情しながらピアノ弾くんだわ。二人のピアノの対決というか絡み合いというか、仲良し~というわけでもなくお互いをぶつけ合っている感じが良かったわ。

矢野さん贔屓の私ですが、ピアノ技術は上原さんが断然すごかった。でも矢野さんは歌の表現力があるからなあ。

とにかく本当にすごかった。良いものを観た。

『さらば、荒野 / 北方 謙三』

さらば、荒野 (角川文庫 (6022)) さらば、荒野 (角川文庫 (6022))
角川書店 1985-04

出版社/著者からの内容紹介
冬は海からやって来る。静かにそれを見ていたかった。だが、友よ。人生を降りた者にも闘わねばならない時がある。夜。霧雨。酒場。本格ハードボイルド、”ブラディ・ドール”シリーズ開幕!(生江有二)

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これまたチャンドラーの影響で、日本のハードボイルドって何だろうなあと思ったら、やっぱり北方兄貴だろうと思ってチョイス。

上のあらすじにもあるけど、バー・酒・ケンカ・銃・女みたいなキーワードの娯楽小説でした。出てくる男の人たちが渋いけど、女性の描写はありきたりだったなあ。しかし腎臓二つダメにして、人工透析を受けている人のあだ名にキドニーっつーのは、どういうネーミングセンスだ。

暇つぶしには良いかもしれんが、あまり面白いとは思わなかった。ブラッディードールシリーズとして9巻ぐらいあるらしいので、あまりに暇だったら続き読む。

『グレート・ギャツビー / スコット・フィッツジェラルド』

グレート・ギャツビー (村上春樹翻訳ライブラリー) グレート・ギャツビー (村上春樹翻訳ライブラリー)
Francis Scott Fitzgerald
中央公論新社 2006-11
出版社/著者からの内容紹介
村上春樹が人生で巡り会った最もたいせつな小説を、あなたに--新しい日本語で現代に甦る、哀しくも美しいひと夏の物語。満を持しての訳業。
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先日の村上訳がかなり良かったので、それではと「華麗なるギャツビー」をセレクト。ちなみに昔チャレンジしてダメだった過去がある。

なるほどー。こういう小説だったのか。しかし文がくどい。短い文のほうが好みなので、あまりに過多な修飾語には目がすべる。これがフィッツジェラルドの文体なのかしら。これも(自分の能力があがれば)原文を読んでみたい。あとはキャラクター内に好きな人間がいなかった。みんな好き勝手に生きてるんだもんなあ。

華やかなパーティー描写の裏になぜか感じる没落感。これから起きる悲劇を上手く練りこんでたのだろうか。あとは、ギャツビーが使う、オールド・スポート(old sport)っていう呼びかけ。これの雰囲気がよくわからんかった。どういう感覚の呼びかけ言葉なんだろうなあ。日本語でも、「ねえ、きみ」とか「おい、おまえ」とか「おお、わが友よ」なんて言い回しで二人の関係が変わる気がするんで、知りたいなあ。

正直、村上春樹が絶賛するほどの「すごい小説」という意味がわからんかったけど、「ふーん」と思って読みました。

ゴーギャン展 2009

20090822.jpgいつもの友(ry と。

ゴーギャン=タヒチのイメージだったんだけど、本当にタヒチの絵が多い展覧会であった。まあ「われわれはどこから来たのか われわれは何者か われわれはどこへ行くのか」がメインなので当たり前か。

思った以上に色使いが独特で綺麗だった。しかし履歴を読んでいて、女癖が悪くてダメだろうとも思った。仏で認められないからって、未開の地を求めてタヒチに渡って、現地の若い女の子に手をつけて……って、好き勝手にやりすぎじゃないだろうか。

毎度謎なんだが、欧米の芸術家は愛人持ちすぎじゃない?妻一筋って、ダリぐらいしか思い出せない(私の知識の狭さにはごめんなさい)。あと友人が言ってた「画家って自己表現として絵を描くのかしら」というのが深かった。自己表現で音楽・ダンスなどはわかるんだけど、なんで画家は絵を描くのだろうか。その衝動が自分にはないので、新しい。

朝イチの集合だったので、美味しいもの食べようツアーの一環として、銀座・ファロ資生堂のランチに行く。写真はない。味は普通だった。すっごい美味しいわけでもなくまずいわけでもないよ。しかし従業員のサービスはさすがでした。デザートをワゴンで持ってきてくれるのだが、「全部載せしてもいいんですよ」と言われたときには惚れた!(お菓子にか従業員にかは不明)。

あ、そうそう。近代美術館の常設展をみているときに、気持ち悪いいぼいぼがあるなあと思っていたら、やっぱりの草間先生だった。黒と銀色のいぼいぼに靴が埋まってる作品なの。さすがです!先生!

 

『ロング・グッドバイ / レイモンド・チャンドラー』

ロング・グッドバイ ロング・グッドバイ
レイモンド・チャンドラー(著) 村上 春樹(訳)
早川書房 2007-03-08
出版社 / 著者からの内容紹介
テリー・レノックスとの最初の出会いは、〈ダンサーズ〉のテラスの外だった。ロールズロイス・シルバー・レイスの車中で、彼は酔いつぶれていた……。
私立探偵フィリップ・マーロウは、億万長者の娘シルヴィアの夫テリー・レノックスと知り合う。あり余る富に囲まれていながら、男はどこか暗い蔭を宿していた。何度か会って杯を重ねるうち、互いに友情を覚えはじめた二人。しかし、やがてレノックスは妻殺しの容疑をかけられ自殺を遂げてしまう。が、その裏には哀しくも奥深い真相が隠されていた……大都会の孤独と死、愛と友情を謳いあげた永遠の名作が、村上春樹の翻訳により鮮やかに甦る。
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なにこれ。ものすごく良かった。

ハードボイルド小説というジャンルが好きなんだけど、チャンドラーを読んだことなかった。そして村上春樹の翻訳というのも初めて読んだ。村上春樹の文体は、海外文学(こんな風に皮肉やウィットに飛んだ文章が多いものには特に)合うのかもしれない。翻訳ものって日本語が固くてけっこう読みにくかったりするんだけど、これはするすると読めた。

主人公フィリップ・マーロウとお酒の描写がまたいい。ジンを半分とローズ社のライムジュースを半分混ぜたギムレット。その酒を飲みながらバーでお互いに友情を感じあっていたマーロウとレノックスの決別が表現された名台詞、「ギムレットには早すぎる」(I suppose it’s a bit too early for a gimlet.)。レノックスが言った台詞だが、彼ももうあの時間が戻ってこないことをわかってたんだろう。

「さよならを言うのは、少しだけ死ぬことだ」(To say goodbye is to die a little.) なんつーのもかっこいい。これ、マーロウが一夜を共にした女の人と別れるときに言った台詞。

ミステリー(なのかな?)としての大きな流れも良いけど、細部の描写も台詞も格好いいこの小説、久々におすすめでした。もう1953年出版だからもう古典の域に入ってきてるけど、村上訳のおかげで現代でも全然遜色なく読めます。最近、ペーパーバック版も出たらしいので、ぜひ興味のある人はどうぞ。

『哲学のモノサシ / 西 研 (著), 川村 易 (イラスト) 』

哲学のモノサシ 哲学のモノサシ
西 研(文) 川村 易(絵)
日本放送出版協会 1996-05
内容(「MARC」データベースより)
壁につきあたったり、不安があって生きてることが苦しくなった時、なぜなんだろう、どういうことなんだろうと考え始める。その時ヒトは「哲学すること」の中にはいっている…。哲学とは何かをイラストと共に紹介する。
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哲学本ですがイラスト満載で、文字を読むというより、不思議なイラストと、「それってどういうことだろう。うーん?」とぼーっと考えるのに合っているように思いました。

哲学入門というか、それ以前の「哲学ってどんな学問なのかしら。なんで哲学ってあんなどうでもいいこと考えるのかしら」なんて疑問を持つ人が読むといいのかも。多感な時期の中・高校生が読むと人生変わるかもしれません(良い方向か悪い方向かはわからんけど)

哲学は面白いけど、それに気づかなければもっと楽に生きられるような気もするんだよなあ。