『月と六ペンス / サマセット・モーム』

月と六ペンス (岩波文庫) 月と六ペンス (岩波文庫)
モーム(著) 行方 昭夫(訳)
岩波書店 2005-07
<表紙より>
皮肉な笑みを浮かべながら、自分は”通俗作家”だとうそぶいていたモーム(1874-1965)だが、その作品の底には、複雑きわまりない矛盾のかたまりとしての人間にそそぐ、<人間探求者>の飽くなき目があった。芸術の魔力に取り付かれた男の徹底したエゴイズムを、シニカルな筆致で巧みに描いてみせたモームの代表作。
Amazonで詳しく見る
by G-Tools

ここんとこ、DQ9に忙しくて通勤中に本を読んでなかったのですが(通勤中にDSをやるな!というご指摘はごもっとも)、点滴のために病院通いがあったので読了。

先日のゴーギャン展でゴーギャンに興味を持ったんですが、そういえば彼をモデルにした小説があったなあということで選びました。いや、なかなか面白かった。ゴーギャンがモデルというか彼を彷彿させるけども、うまくフィクションと混ぜ合わさっていた。語り手の小説家の青年の視点が冷静で少し皮肉もきいてて、こういう感じは好きだ。

ストリックランド(小説のなかの画家)は、かなりひどい男で、自分の芸術に向かって周りを巻き込んでいくんだけど、こういう男に惚れる女もいるわよねということで、ちょっとその女性側の気持ちがわかりかけてしまった。本当にゴーギャンがこういう人だったなら、前言撤回して「しょうがない」と言ってしまうかも。

題名が素敵ですが、この由来はモームの「人間の絆」という作品への書評で 「多くの他の若者と同じく、主人公のフィリップは『月』に憧れるのに夢中であったので、足元にある『六ペンス』を見なかった」とあったのから引用されたそうだ。ストリックランドは、美の理想(『月』)を追求しつづけ、世俗的な喜び、富、名声(『六ペンス』)などを投げ出す、ということらしい。なるほど。