私はフェルメール 20世紀最大の贋作事件 小林頼子/池田 みゆき ランダムハウス講談社 2007-09-06 内容(「BOOK」データベースより) ナチスに協力した売国奴か、一泡吹かせたヒーローか。歴史上最も有名な贋作者の一人となったファン・メーヘレンの栄光と挫折の生涯が、膨大な資料を踏まえ、スピードとスリルに満ちた文体で甦る。 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
去年、フェルメール展に行ったのですが、フェルメールは贋作が多いという話は知っていたんだけど、どういう風に作っているのか知らないので興味があったのです。本によると、贋作者は世界で二番目に古い職業だそうな(一番目は売春だと言われてますね。この二番目はいろんなパターンがあるらしいので、真実は知らないけど)。
さて、このファン・メーヘレンという人は、古い時代の贋作を作るのにいろんなことをしてました。昔は絵の具を材料から作っていたので、フェルメールの青を作るのにラピスラズリを買ったり、絵の具のひび割れを出すためにかまどで焼いてみたり、キャンバスは実際の17世紀のものを買って表面を剥ぎ取って使用したり、かなり念入りに細工をしたのですね。そして彼の描いた「エマオの食事」は本物だと美術評論家たちに認められ、高値で取引されたわけです。
後に、ナチに国宝級の宝を売った売国奴だと訴えられ、それは自分が描いたものだと自白して、あらあらあの絵もそうだったの?!とバレたわけですが、これがなかったらたぶん贋物が美術館にかかってたんだろうなあ。読んでて思ったんですが、美術評論家の一言でその美術的価値が天と地ほどに違ってきてしまうんだよね。芸術関係って確固たる基準がないから権威ある人が「そうだ」と言ったらそれで価値が決まってしまう。贋作をいかにもすごく褒め称えている記述に「ぷぷっ」と感じつつ、芸術関係はもう自分基準で良い・悪いを感じてればいいんじゃないかとつくづく思いました。
作者が贋作を作る人に対しての態度が一貫してないので(その技術を認めてるのか非難しているのか)そのあたりがもやもやしましたが、絵画ビジネスの世界を垣間見れました。