『海辺のカフカ (上)(下) / 村上 春樹』

海辺のカフカ (上) (新潮文庫) 海辺のカフカ (下) (新潮文庫)

海辺のカフカ (上)  / 海辺のカフカ (下) (新潮文庫)
村上 春樹
新潮社 2005-02-28
内容(「BOOK」データベースより)
「君はこれから世界でいちばんタフな15歳の少年になる」―15歳の誕生日がやってきたとき、僕は家を出て遠くの知らない街に行き、小さな図書館の片隅で暮らすようになった。家を出るときに父の書斎から持ちだしたのは、現金だけじゃない。古いライター、折り畳み式のナイフ、ポケット・ライト、濃いスカイブルーのレヴォのサングラス。小さいころの姉と僕が二人並んでうつった写真…。
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今年最後の本になるかな?と思いながら、おもしろく読めた。

小説の構造は二つのストーリーが同時展開される形式で、「世界の終わりと~」と似てる印象だなと思ったらその続編的な立ち位置だと聞いて納得。古典が話のベースになってるし、単語や出来事がシンボリックなので深読みすればするだけのストーリーができるのだと思うのだが、今回はさらっと読んだ。

しかし読みながらずっと他のことを考えていたなあ。頭の隅に二重螺旋の図が浮かんでいたのだが、最後に一本の線にならなかったのが私的には拍子抜け。でもそのパラレルさが意味ありげよね……とも思ったのだが、いやいや村上作品はバーナム効果ってやつで読み手が自己を小説に投影して勝手にいろいろと印象を付加してるんじゃないか?とか自問自答。

「(略) それで、ことばで説明しても正しく伝わらないものは、まったく説明しないのがいちばんいい」(略)「自分に対しても、たぶんなにも説明しないほうがいい」

更にこのあたりを読んで、哲学者のウィトゲンシュタインを思い出したんだけど違うかなあ。論理哲学論考の「語りえぬものについては、沈黙せねばならない」と同じものを感じたんだけど。でもウィトゲンシュタインの思想をよく知らないんで、来年の課題として、もう一回入門書でも読もうかと思った。

とまあ本筋とは関係ないところで、色々と思った本書ですが読み終わった人たちで色々と感想を話し合うのが、楽しそうな気がします。深く考えずにインスピレーションで。