『神秘学マニア / 荒俣 宏』

神秘学マニア (集英社文庫―荒俣宏コレクション) 神秘学マニア (集英社文庫―荒俣宏コレクション)
荒俣 宏
集英社 1994-07

内容(「BOOK」データベースより)
古代から世界の暗部を支配してきた神秘学。それは哲学や思想として人間の風俗、文化までをも巻き込んで闇の中に連綿と伝えられてきた。オカルト学の巨人・荒俣が、20年に及ぶ神秘学の研究をここに集大成。時代や地域を超え、人智をも超えた怪奇な現象に今、光があてられる。散逸していた原稿を集め新たに編んだオリジナル文庫の決定版。

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この日記のコメントで江戸の風水ネタを思い出し、そういえばこの元ネタって荒俣先生から学んだのよね、という流れで読んだ。荒俣先生がいろんなところで書いた文章をまとめて一冊にしたようで、いわば神秘学のトリビア的な本でした。へぇーへぇーへぇーってな具合。

いろいろ語られていたこの本ですが、なかでも面白かったのが「魔法使いのための宇宙方程式入門」というピュタゴラス派の数秘術を解説していた章。ピュタゴラスといえば三平方の定理でも有名ですが、彼らは宇宙は数に支配されると考えていたため、√2 の存在を許せなくて門外不出の秘密にしていたそうです。あと音楽も大事にしていた彼らですが、トニックウォーターなどのtonic、もともと強壮剤を意味するこの単語も トーンtone から生まれていて、彼らが音楽で治療をしていたからなんだって。へぇへぇへぇ。

ピュタゴラスだけではなく、興味深いのが数字の持つ力の解説。日本でも4は死に繋がるからよくない、とか8は八で末広がりで良いとかあるけど、それの西洋版みたいなもの。簡単に1と2と3を説明すると、1は奇数でいつも中心に1が存在するから、神の属性。転じて「善」「単」「右」を獲得し、さらに奇数と偶数を混ぜあわえても奇数になるところから、「優位者」または「男性」の属性。2は中心に神をもたなかったおかげで、悪と女性的な弱々しさをあらわす数字になり、「受身」「女性」「左」といった陰の属性。3は神と悪魔の合体(1+2)であり、一段高位のハーモニーをつくりだす最初の数。ピュタゴラスは、始まりと中心と終わりがすべて含まれているから3を完全数と読んだ。そして2だと線だけど3になると広がりをもつので、世界に想像と拡大をもたらす、らしい。

西洋の昔の絵や建築を見ると、シンボル的なものが多く使われているので、こういう意味もあるのかなあと思いつつ鑑賞するとより楽しい(こともある)。何はともあれ、分厚かったけど楽しい本でした。