『プラネタリウムを作りました。 / 大平 貴之』

プラネタリウムを作りました。―7畳間で生まれた410万の星 プラネタリウムを作りました。―7畳間で生まれた410万の星
大平 貴之
エクスナレッジ 2003-06
内容(「BOOK」データベースより)
幼いころに星空や宇宙に興味を抱いてプラネタリウム作りを始め、次第に興味を深めながら、時に問題にぶつかりつつも、より美しい星空を求めてプラネタリウム作りに取り組んできた記憶であり、またその心を書き記したものである。
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これは面白い本!小学二年のときに夜光塗料の星で作ったプラネタリウムから、アマチュアでは不可能だと言われたレンズ式プラネタリウムを個人で作成した著者のプラネタリウム作成の歴史である。これは理系を目指す子供にぜひ読ませるが良いよ。

大平さんはひとつ壁にぶつかるたびに色んなことを調べ探求しクリアし、また壁にぶつかって……とモノづくりの見本みたいな人だ。天才ではないんだろう、でもその根気と執念が並外れている。だからこそ、これだけのものを作り出せたんだろう。彼が作り出したプラネタリウムがどれだけすごいかというと、普通のプラネタリウムが数千個からせいぜい一万個程度のところ百万個以上の星を映し出しすメガスターを個人で作り出したということなのだ。個人だからこそ企業で使えるような人手や予算や技術がない。それを知人の助けや代用品(自作したり)、自分で技術を習得などして補い、実に半生をかけてプラネタリウムを作り続けてる。すごいよ、ほんとすごい。

さて、そんな技術者視点とは関係なく私が感じた印象的な場面。彼が上映会をしたときのこと。場所は青山のギャラリー、時は折しもミレニアムクリスマス、そして場内はカップルばかりで彼の作ったプラネタリウムの描く星空に浸っているという情景だ。

そのとき僕はある種の感動と、ひときわの不思議さを覚えたのだ。なぜなら、ここで星空を見せているプラネタリウムのメガスターは、この美の極致とも言うべき空間とはまさに対極の、あまりに雑然とした作業部屋から生まれ出たものだからだ。
作業部屋に入れば、工具や機材、薬品瓶が雑然と並び、机の上にはネジや電子基盤類、床には金属の削りカスや配線の切れ端が散乱している。そして、フォトレジストを感光させないための黄色い照明。およそ、星空の工房などというイメージとは縁遠い七畳間。そんな場所から生まれでた星空が、天と地の差ともいうべき、スパイラルのミレニアムクリスマスを彩っている。そのことの不思議さに奇妙にこみ上げるものを感じたのだ。

美しい星空が狭い七畳から苦労の末に出来上がったというのは、プラネタリウム=ロマンチック=カップル=けっ という方程式じゃない新鮮な視点を与えてくれました。