『夏への扉 / ロバート・A・ハインライン』

夏への扉 (ハヤカワ文庫 SF (345))

夏への扉 (ハヤカワ文庫 SF (345))
ロバート・A・ハインライン
早川書房 1979-05
<本裏よりあらすじ>
1970年12月3日、かくいうぼくも夏への扉を探していた。あなたならどんな気持ちになるだろう?もし、最愛の恋人には裏切られ、仕事は取り上げられ声明から二番目の発明さえも騙し取られてしまっていたら……。ぼくの心は12月の空同様に凍てついていたのだ!そんな時ぼくの心をとらえたのは、夜空にひときわ輝く<冷凍睡眠保険>のネオンサインだった!

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──小中学生のころはハヤカワ文庫に夢中でした。

SFなんて読むの久しぶりだなあと思いつつ、古典SFの代表作と言われてるらしいので読んでみた。1979年に書かれたこの小説、未来の世界として2000年の様子が書いてある。現実は小説内のような世界じゃなかったけども、「典型的な」未来の世界の描かれ方が懐かしい。主人公がワガママで抜けてるあたり技術者っぽい性格だと思った。あとSFは造語も面白さの一端なのでたぶん原本で読んだほうが良いのかも。日本語訳はちょっと違和感だ。メイドロボットの Hired girl を 文化女中器って……。

ストーリーは古典的タイムトラベルも混ぜられ平凡ではある。けど主人公と猫のピートのちょっとした描写が良かった。特にタイトルになっている夏への扉のくだり。以下、引用。

彼(ピート)は、その人間用のドアの少なくともどれか一つが、夏に通じているという固い信念を持っていたのである。これは、彼がこの欲求を起こす都度、ぼくが十一箇所のドアを一つずつ彼について回って、彼が納得するまでドアをあけておき、さらに次のドアを試みるという巡礼の旅を続けなければならぬことを意味する。(略)だが彼は、どんなにこれを繰り返そうと、夏への扉を探すのを、決して諦めようとはしなかった。

そして大団円後のラスト。

ただし、ピートは、どの猫でもそうなように、どうしても戸外へ出たがって仕方がない。彼はいつまでたっても、ドアというドアを試せば、必ずそのひとつは夏に通じるという確信を、棄てようとはしないのだ。
そしてもちろん、ぼくはピートの肩を持つ。

 私もピートの肩を持つ。